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2018年5月、株式会社スマートデイズが運営する女性専門のシェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐる投資トラブルが発生しました。かぼちゃの馬車事件を振り返りつつ、このような物件に投資しないためにどのような点に注意すればいいか、詳しくご説明します。
なぜ「かぼちゃの馬車事件」は起こったのか?
2018年5月、「かぼちゃの馬車」という名の女性専用のシェアハウス事業を行っていた株式会社スマートデイズが、東京地裁から破産手続き開始決定を受けたと発表しました。
「利回り7%、30年間家賃保証」という謳い文句でオーナーを募っていたスマートデイズですが、結果として、オーナーたちは多くの負債を抱えることになってしまったのです。これは、不動産投資における大きな失敗事例といえるでしょう。
かぼちゃの馬車事件が起こった背景を振り返りつつ、このような物件に投資しないためにはどのような点に注意すればいいか、詳しくご説明します。
規模を大きくし過ぎたことで起こったかぼちゃの馬車の崩壊
シェアハウスはトレンドの物件であり、一定のニーズがあることも確かです。しかし、「シェアハウスに入居したい」と考えている人は、賃貸住宅市場全体の需要から見れば、ほんのわずかでしょう。
ところがスマートデイズは、わずか数年のあいだに、膨大な数のシェアハウスを建ててしまいました。女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の最終的な管理棟数は、845棟11,259部屋。元々ニーズが少ないシェアハウスを多数作ることで、入居者を分散させてしまい、その結果、空室率が非常に高くなってしまったのです。
かぼちゃの馬車も、年間1~2棟の新設にとどめていれば、おそらく破綻することはなかったと思います。しかし、あれだけ数を作ってしまったら、入居者がつかなくなるのは当たり前。しかも、サブリース契約(不動産会社がオーナーから物件を一括して借り受け、1部屋単位で入居者に貸し出す契約のこと)で家賃保証をしていましたから、建てれば建てるほど、自社の首を締めることになってしまったのです。
スマートデイズでは、市場より割高な価格でシェアハウスを販売することで、家賃保証のマイナス分を補填し、既存の顧客にサブリース分の賃料を支払うという流れとなっていました。まさに、自転車操業に陥ってしまったわけです。
「サブリース契約だから安心」の嘘
「サブリース契約をすれば、入居者がいなくても賃料が入るから安心」と考えるのは間違いです。なぜなら、サブリースの賃料というのは、状況に応じてすぐに下げられてしまう可能性があるからです。
もちろん、賃料の下げ幅や下げる期間については契約を交わしますが、「一定期間入居者がつかなかったから」「入居者の賃料を下げたから」といった理由で、どんどん契約金額が下がっていった場合、期待した賃料を受け取ることはできません。
SYLAでもサブリース契約はしていますが、サブリースを選ぶオーナーは1%強しかいません。なぜなら、「東京都心、駅から徒歩7分以内」の好立地にしぼってマンション開発を行っており、入居者が途切れないからです。
例えば、賃料10万円のマンションに入居者がついた場合、月々の家賃収入は10万円です。ところが、サブリースを選ぶと、弊社にリース代10,000円を支払い、家賃収入は90,000円になるわけです。入居者が途切れなければ、わざわざ弊社に10,000円を儲けさせる必要はありません。
物件購入後に、サブリース契約に変更することもできますから、オーナー様には「入居者がつかなくなったら、サブリースに変えてみましょう」とご案内しています。
ちなみに、SYLAのサブリース物件の家賃見直しは5年ごとで、家賃が上がるケースもあります。その場合、サブリース契約の金額も上がることになります。実績として、これまでにサブリース契約の金額が下がったケースはありません。
不動産投資と銀行との関係
スマートデイズは、首都圏を中心に「かぼちゃの馬車」をはじめとしたシェアハウス事業を展開しており、その物件は1,000万円や2,000万円で買えるものではありませんでした。平均価格は1億3,000万円ということですが、このような物件を現金で買える人はほとんどいないでしょう。つまり、かぼちゃの馬車の顧客の中心は、銀行からお金を借りて物件を購入する方ということになります。
ところが、シェアハウスという商品に対して、お金を貸そうという銀行は多くありません。シェアハウスは、アパートやマンションのような共同住宅ではありませんので、銀行も融資しにくいのです。
そこに目をつけたのが、スマートデイズと結託していた銀行です。ほかの銀行で融資を受けにくいことにつけこんで、「うちがオーナーに貸しますよ。だから、物件をたくさん作ってください」とスマートデイズに持ち掛けました。これが、かぼちゃの馬車の急激な増加を後押しすることになりました。
この銀行では、ローンの審査時に、データを改ざんしていたことがのちに発覚しました。オーナーの方は、ローンを通すために嘘の情報を伝えるように指示された時点で、スマートデイズに対して「あやしい会社だ」と疑ってかかるべきでした。結果として、スマートデイズは倒産し、負債を抱えたオーナーたちは、現在銀行を相手取って訴訟を起こしています。
これは余談ですが、かぼちゃの馬車事件以降、不動産投資に対する融資の審査は、きびしさを増している傾向があります。年収要件がきびしくなっただけでなく、不動産投資への融資を見送る金融機関も出てきています。
また、物件に担保価値があるかどうか、銀行側がよりきびしく見極めるようになってきています。シェアハウスはもちろんのこと、一棟アパートでも融資が受けにくくなっているのが現状です。
かぼちゃの馬車のような失敗物件を買わないために
かぼちゃの馬車のオーナーたちは、脅されて物件を買ったわけではありません。スマートデイズや銀行が詐欺的な行為を行っていたとしても、民法では詐欺の被害者が100%守られる規定にはなっていません。
脅迫されていたのであれば話は別ですが、詐欺の場合は、だまされるほうも悪いというのが民法の考え方です。これについては、私も同感です。
物を買うときは、それが高額であればあるほど「本当にいい物かどうか」を吟味するものでしょう。かぼちゃの馬車の物件は、1億円以上の物件でしたから、どんな物件なのかオーナー自身が調査すべきだったと思います。
例えば、シェアハウスの前に丸一日、24時間立ってみて、誰も人が通らなかったとしたら「ここに住もう」と思う人はいませんよね。周辺の商店街を歩いてみたり、実際に物件に泊まってみたりすれば、その物件にニーズがあるのか、長年にわたって借り手がつくかどうかということは、不動産の知識がない方でもわかります。
物件を購入する前に不動産会社に対して、財務内容を見せてほしいと申込みをしてみるのもひとつの手です。財務内容を見せられない会社から物件を購入するのは、やめたほうがいいでしょう。どのような沿革の会社なのか、どこの建設会社で建てた物件なのかなど、ほかにも自分で調べられることはたくさんあります。
不動産投資を考えるなら、できるだけ情報を集めて、自分の目で調査するようにしてください。担当者と話す中で「おかしいな」と感じた会社や、質問に答えてくれない会社、情報開示をこばむ会社などは、やはり信用できないでしょう。
長期間物件を保有し、運用していく不動産投資では、不動産会社との付き合いも長期間続きます。倒産の可能性が低く、管理体制がしっかりしていて、不動産運用のパートナーとして適している会社を選ぶよう心掛けましょう。
信頼できる不動産会社を見極めることが、不動産投資の成功につながります。