不動産投資信託(REIT)とは?概要や不動産の種類などを紹介

不動産投資には、現物不動産投資や不動産投資型クラウドファンディングなど、さまざまな種類の投資方法があります。そのなかで「不動産投資信託」は少額で始められる、証券取引所に上場されており一定の流動性があるなど、実物不動産にはない魅力がある金融商品です。本記事では不動産投資信託の仕組みや特徴、種類による違いなどを解説します。

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不動産投資には、現物不動産投資や不動産投資型クラウドファンディングなど、さまざまな種類の投資方法があります。そのなかで「不動産投資信託」は少額で始められる、証券取引所に上場されており一定の流動性があるなど、実物不動産にはない魅力がある金融商品です。本記事では不動産投資信託の仕組みや特徴、種類による違いなどを解説します。

不動産投資信託(REIT)の概要

不動産投資信託は、別名「REIT」と呼ばれています。一般的に日本国内のREITは「JAPAN」のJをつけて「J-REIT」と表記されます。

1960年にアメリカで生まれ、その後2001年に日本でのサービスが開始されました。J-REITで保有している物件は、2023年9月時点で4,663件あります。

不動産投資信託(REIT)の特徴

不動産投資信託は、「不動産投資法人」と呼ばれる会社のような形態をとっており、株式会社でいうところの株式にあたる「投資証券」を発行します。不動産投資信託に投資する投資家は、この投資証券を購入します。

そして、不動産投資信託は投資家から預かった資金をもとに、複数の不動産に投資。購入した物件の賃料収入や、物件の売買で得られた収益を投資家に分配します。投資家は、購入した投資証券の数量に応じて分配金を受け取ることができるのです。

このように、不動産投資信託は「不動産を投資対象とする金融商品」であり、株式と同じように扱います。つまり、不動産投資信託に投資する(投資証券を購入する)場合、実物不動産投資とは違い、不動産の所有権や運用の一切に係る裁量はありません。

投資家が選べる不動産投資信託(REIT)の種類

投資家が選べる不動産投資信託の種類は、大きく分けて3種類あります。それぞれ「特化型」「複合型」「総合型」です。

特化型はオフィスならオフィスのみ、住居なら住居のみ、1種類の不動産に集中している不動産投資信託です。1種類に集中して投資するため、値動きを予測しやすく、不動産に関する情報収集もしやすいといえます。さらに、値動きの幅も大きいため、大きなリターンを期待するときは特化型を選ぶとよいでしょう。

複合型は、オフィス×住居、オフィス×商業施設など、2種類の不動産に分散投資している不動産投資信託です。複合型より多い3種類以上の不動産に分散投資する不動産投資信託は、総合型と呼ばれます。これら2種類は、分散投資によって値動きの幅を小さくするため、値崩れのリスクを軽減できます。その分、特化型と比べるとリターンは小さくなります。

特化型不動産投資信託(特化型REIT)の種類

特化型不動産投資信託の種類について、投資対象別に6種類の特徴を紹介します。

比較的安定した住居特化型

住居特化型は分配金変動が少なく、リスクもそれほど大きくないといわれている種類です。住宅は、どのような経済状況であっても「居住用」として需要があるためです。

また、住居特化型の主な運用益である家賃収入は、景気に左右されにくいため、安定した分配金が期待できます。

多く運用されているオフィス特化型

サービス開始当初は、保有不動産のほとんどがオフィス特化型でした。2023年9月末時点でも、不動産投資信託で運用される不動産のうち、オフィスが多くの割合を占めています。

ただ、新型コロナウイルスの影響で、在宅リモートワークが推奨されたことにより、オフィスビルの空室率も上昇傾向にありました。今後コロナ前のような稼働率が戻ってくるか注目です。

景気に左右されやすいホテル特化型

新型コロナウイルスの影響により、大きく値下がりした種類がホテル特化型です。ホテル特化型は景気に左右されやすく、分配金変動のリスクが大きいといわれています。ホテルの人気度合いやシーズンにより大きな変動が見られるため、運用は上級者向けといえます。

<h3>ホテルほどではないが…景気の影響を受けやすい商業施設特化型

商業施設は、テナント料が長期契約を基本としているため、契約期間中の運用益は安定します。

一方で、商業施設特化型も景気に左右されやすく、増税や人件費高騰などで店舗経営がうまくいかなくなる可能性があります。テナント退去が発生し、その分運用益が下がることを考慮する必要があります。

発展が期待される物流施設特化型

物流施設特化型は、今後の発展が期待できる種類です。新型コロナウイルスの影響により「おうち時間」として、非接触を対策とする風潮ができました。外出を控え、インターネット通販の利用者が増えたことで、物流業界を支える施設が今後増えることが予想されます。

一方で、物流施設は1度テナント退去があると、次の借り手が決まるまで、時間がかかる傾向にあります。空室期間中は、運用益が下がることを考慮する必要があります。

現時点では少ないヘルスケア特化型

ヘルスケア施設特化型は、現在徐々に登場してきていますが、他の種類と比べると、まだまだ少ないといえます。

ヘルスケア施設特化型は、医療施設や高齢者住宅、有料老人ホームなどが対象です。超高齢化社会である日本では需要があり、今後増えていく種類だと考えられます。

不動産投資信託(REIT)の魅力と注意点

不動産投資信託(REIT)の魅力と注意点についてご説明します。実際に投資する前に、どちらの面も把握しておくことをおすすめします。

魅力①少額から投資可能

不動産投資信託は少額から気軽に投資できます。投資金額が一般的に数百万円単位の実物不動産投資に対して、不動産投資信託は数万円から数十万円と少額です。

魅力②実物不動産と比べて流動性が高い

不動産投資信託は金融商品です。J-REITの「投資証券」は証券取引所に上場されています。そのため投資家は、取引時間内であればいつでも簡単に売買できるのです。また複雑な手続きも必要ないため、急遽現金が必要になったときや値上がりしたタイミングなどに、気軽に売却できて便利です。

ただし、特定の人物のみに勧誘を行う「私募REIT」と呼ばれるものは、J-REITと異なり証券取引所に上場されていません。そのため簡単に売買できず、J-REITと比較して流動性は低いといえるでしょう。

注意点①相場が大きく変動する可能性

不動産投資信託は有価証券であり流動性が高いことから、相対取引である実物不動産と比べて値動きは大きいです。加えて、株式と同様に元本や分配金も保証されていません。不動産ではなく、有価証券としていくつかのリスクがあることは、十分に理解しておきましょう。

注意点②相場の動向を細目にチェックする必要がある

投資法人が発行する投資証券は証券取引所に上場されているため、日々価格が変動します。投資家は株への投資と同様に、投資証券を購入したらほったらかしにするのではなく、きちんと不動産市場の動向をチェックする必要があります。上場廃止や倒産があれば、それに合わせて運用も廃止になるでしょう。また、自然災害が起これば大きな打撃を受けます。

投資するからには、運用会社の経営状況や日本の経済・被災状況をチェックすることが不可欠です。

まとめ

今回は、不動産投資信託(REIT)について、魅力や注意点、投資可能な不動産投資信託の種類を紹介しました。

不動産投資信託に投資し、投資証券の値動きや相場動向の把握に努めることで、不動産市場に対する理解が深まっていきます。そのため、「実物不動産への投資はハードルが高い」と感じていた人は、まず少額から不動産投資信託に投資してみてもいいかもしれません。

ただし、不動産市場では新型コロナウイルスの影響がまだ数年は続くと考えられます。値動きのチェックや情報収集を、適宜行うことをおすすめします。