老後に必要となる資金
まずは、定年退職後、生活をするためにどれぐらいのお金が必要か、総務省統計局の『家計調査報告(家計収支編)2020年』を参考に見てみましょう。
単身の場合
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単身世帯平均 |
65歳以上の単身無職世帯 |
消費支出 |
150,506円 |
133,146円 |
食料 |
41,373円 |
36,581円 |
住居 |
20,950円 |
12,392円 |
光熱・水道 |
11,687円 |
12,957円 |
家具・家事用品 |
5,393円 |
5,328円 |
被服及び履物 |
4,910円 |
3,181円 |
保健医療 |
7,129円 |
8,246円 |
交通・通信 |
18,310円 |
12,002円 |
教育 |
2円 |
0円 |
教養娯楽 |
15,867円 |
12,910円 |
その他消費支出 |
24,888円 |
29,549 円 |
65歳以上の単身無職世帯における1か月の平均消費支出は13万3,146円です。全世代の単身世帯の平均が15万506円なので、65歳以上の単身無職世帯は全世代の平均よりも1万7,360円=約12%減となっています。
ただし、支出の種類別に単身世帯全体と65歳以上の単身無職世帯を比較すると、
65歳以上の単身無職世帯は「光熱・水道」や「保険医療」が多いです。「光熱・水道」が増えているのは、働いている世帯よりも在宅時間が長いことが関係しているためでしょう。また、
「保険医療」は病院や薬に関する費用によるものと考えられます。
なお「住居」に関する費用は、持ち家か賃貸かによって大きく異なるものです。
夫婦(2人世帯)の場合
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2人以上の世帯 |
65歳以上の夫婦のみの無職世帯 |
消費支出 |
277,926円 |
224,390円 |
食料 |
80,198円 |
65,804円 |
住居 |
17,374円 |
14,518円 |
光熱・水道 |
21,708円 |
19,845円 |
家具・家事用品 |
12,708円 |
10,258円 |
被服及び履物 |
9,175円 |
4,999円 |
保健医療 |
14,296円 |
16,057円 |
交通・通信 |
39,972円 |
26,795円 |
教育 |
10,293円 |
4円 |
教養娯楽 |
24,987円 |
19,658円 |
その他消費支出 |
47,088円 |
46,753円 |
65歳以上の夫婦のみ無職世帯の1か月の平均消費支出は22万4,390円です。2人以上世帯全体の平均が27万7,926円なので、65歳以上の夫婦のみ無職世帯は全世代の2人以上世帯に比べ、5万3,536円=約20%減となっています。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯も、2人以上の世帯全体に比べて「保健医療」費用が多いです。やはり、高齢になると医療費が増加する傾向にあります。
2人以上世帯の場合も「住居」費用は、持ち家か賃貸かによって金額が異なるものです。2人世帯でローンを組んで家を購入した人は、65歳になるころにはローンを完済していることも少なくありません。
共通して必要になる資金
単身か夫婦2人暮らしかで月々の世帯消費支出は異なりますが、上記の日々の生活費に加え、共通して必要になる資金として以下のようなものがあります。
・お祝い費用
子どもがいる場合、子どもの結婚や孫の誕生・進学などにお祝いを贈る必要が出てくるでしょう。
・リフォーム費用
持ち家の場合、家の老朽化に合わせて修繕が必要です。また、高齢化にともなって住居のバリアフリー化を進めなければならないこともあります。
・入院費用、手術費用
上記でも見たように、65歳以上になると単身・夫婦世帯ともに医療費が増加する傾向にあります。若い頃に比べ、入院や手術が必要になることも少なくありません。
・介護費用
高齢になると介護サービスを必要とする場面が増えるでしょう。75歳以上の約3分の1が要支援・要介護の認定を受け、介護保険を利用して介護サービスを活用しています。介護保険適用のサービスを受けると、自己負担額は費用の1割~3割です。
・葬儀費用
家族に負担をかけたくないとの思いから、自身の葬儀代を用意する人が増えています。
【実情】30歳の平均貯金額
老後を送るためにどれぐらいのお金が必要か、イメージができたと思います。では、実際にどれぐらい貯金をしているのでしょうか。2020年に金融広報中央委員会が実施した「
家計の金融行動に関する世論調査(2020年)」を見ていきます。
単身の場合
30代の単身の平均金融資産保有額(預貯金や株式、保険などの合計)は327万円ですが、「中央値(データを低い数値から並べたときに中央に来る値)」は70万円となっています。
327万円のうち、預貯金は167万円と半分程度です。
夫婦(2人世帯)の場合
30代の夫婦2人世帯の平均金融資産保有額は591万円、中央値は400万円です。また、591万円のうち、
預貯金は261万円で全体の約44%となっており、資産全体に占める株式や保険といった金融商品の割合が単身に比べて高くなっています。
30歳から始める貯金のコツ
30代の貯蓄額を見て「思ったより貯めているな…」と感じたでしょうか。ここでは、30歳から貯金を始める人に向けて、貯めるコツをご紹介します。
先取り貯金をする
収入を得たら、先に一定額を貯金するルールにしましょう。「給料の残りを貯金に回す」という方法では、実際にはなかなか貯まりません。社内貯金や財形貯蓄を活用し、毎月の給料日に自動的に貯金されるようにするのもおすすめです。
固定費を削る
毎月かかっている固定費の削減も、貯金を増やすことにつながります。居住費・通信費・水道光熱費・医療保険料や生命保険料・各種サブスクリプションなど、
プランを変更したり不要なものを廃止したりして、支出を減らせないか考えてみましょう。
資産運用をする
毎月、決まった金額を貯金できるようになったら、その一部を資産運用に回してみるのもいいでしょう。低金利時代の今、銀行口座にお金を預けているだけではお金を増やすことは難しいです。先ほど見たように、
30代の単身・夫婦2人世帯ともに、金融資産の5割は預貯金以外のかたちで保有しています。
毎月一定の額を積み立て、投資信託などで運用する積立投資のように、貯金感覚で無理なく取り組める金融商品がおすすめです。近年では、数百円から積立できる商品など初心者でも始めやすく、リスクも低いものが増えています。
30歳から資産運用を考えるなら
これから資産運用を始めるなら、どのように進めていけばよいのでしょう。ここでは、資産運用のポイントや、30歳にオススメの投資方法をご紹介します。
リスクを軽減する資産運用のポイント
資産運用のために投資する金融商品は価格が変動するため、元本(投資した金額)よりも商品の価値が下がってしまうリスクがあります。リスクをできるだけ小さくするには、以下に挙げる投資運用の3つのコツを押さえることが大切です。
(1)分散投資
ひとつの銘柄の株式や債権などに資産を投資するのではなく、
さまざまな商品・銘柄に分散して投資することです。さらには、国内商品だけでなく、外貨建ての株式や債券などにも投資するといったように、地域の分散もリスクの軽減につながります。
(2)積立投資
ひとつの金融商品に投資する際、一度に大きな金額を投資するのではなく、
毎月少額ずつ投資する方法が「積立投資」です。投資信託を購入する際にこの方法を利用すると、投資信託の単価の変動によって生まれるリスクをカバーすることができます。
投資信託の1口当たりの単価は、運用状況によって変動するものです。毎月1万円ずつ積立投資をする場合、単価が高いときよりも安い時のほうが多くの口数を購入できます。このように購入するタイミングを分散することで、1年単位で見ると1口当たりの投資金額が均等にならされ、投資した総額と保有している投資信託の価格を比較した場合、利益が出るでしょう。
(3)長期投資
資産を増やすには、長期間運用することもポイントです。
運用するなかで得られる配当金や分配金をさらに投資に回し、さらに利益を出すことができます。
おすすめの投資方法
それでは、おすすめの投資方法を簡単にご紹介します。
投資信託
「投資信託」を購入し、投資信託販売会社に資金を提供することです。多くの購入者から集めたお金は、運用の専門家によって、株式や債券などの売買を行い運用します。運用の結果、利益が出れば投資額(投資信託の購入額)に応じて分配金が支払われます。
ETF
「上場投資信託」とも呼ばれている商品です。証券取引所に上場しており、「東証株価指数(TOPIX)」などのような、指標に連動した動きをするように運用されます。
株式
資金を出資した人に対し、株式会社が発行する証券を「株式」とよびます。株式を保有していると「株主」になり、保有数に応じて経営に参加したり、会社が出した利益の配分を受けたりすることができます。
iDeCo
「個人型確定拠出年金」とよばれる私的年金制度です。毎月掛け金を払い、金融商品を選んで運用します。掛け金と運用益の合計額を受け取るのは60歳以降です。毎月の掛け金や運用益、受け取り時に税制上の優遇措置があります。
不動産
収益用の物件を購入し、第三者に貸して家賃収入を得る方法を「不動産投資」といいます。分譲マンションを1室購入して貸す「ワンルーム投資」と、集合住宅を1棟購入して貸す「一棟買い投資」が主流です。
クラウドファンディング
「クラウドファウンディング」は、ネットのプラットフォーム上で起業や新商品などの開発を目的に資金調達をする方法です。この手法を使い、出資の見返りに株式や分配金を受けるものを「クラウドファンディング投資」といいます。
応援型不動産クラウドファンディング「利回りくん」も、一口1万円という少額から出資できるクラウドファンディング投資です。募集している不動産は優先劣後構造を採用しているため、運用時に損失が出た場合でも、一定額までは出資者よりも事業者が優先的に補てんします。
また、特定のコンセプトを持った不動産物件が投資対象になるので、配当金の受領に加えて社会貢献や地域再生などへの支援にもつながります。
「利回りくん」の詳細は
こちらをご覧ください。
まとめ
老後に必要な金額や貯金額の目安を知ることで、今後の資産形成について考えるきっかけにしていただけたでしょうか。
30歳という年齢は資産形成を始める時期として、決して遅くはありません。投資先を分散し、無理のない金額で長い期間を見据え、資産を築くべきです。