個人事業主がふるさと納税をするメリット・デメリット!上限は?

ふるさと納税は実質2,000円から、寄付した自治体から返礼品を受け取れます。食べ物から日用品、家具など、地域ならではの特産品を頂ける魅力的な制度です。寄付金控除があることから節税にも活用したいと考える個人事業主の方も多いでしょう。 この記事では、個人事業主がふるさと納税を利用するときに知っておくべきことを紹介します。加えて、上限額や控除限度額など、節税につなげるための注意点もあわせて解説します。

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メリットが多い?個人事業主がふるさと納税をすべき2つの理由

寄付金控除は自治体によって要件はあるものの、ふるさと納税は基本的に誰でも利用できる制度です。それでは、個人事業主がふるさと納税を行うメリットを紹介します。

理由1.個人事業主は納税上限額が高くなる場合が多い

ふるさと納税は、自治体に寄附した金額の一部を所得税や住民税から控除できます。個人事業主は節税対策としてふるさと納税を活用する方も多いですが、ふるさと納税に支払う金額には上限額が決められています。

ふるさと納税の算出方法は課税所得から算出されます。個人事業主は給与所得者のように給与所得控除がない分、会社員より課税所得が大きくなりやすいです。ふるさと納税の上限額は課税所得に応じて決まるため、個人事業主は会社員よりも上限額が高くなります。

会社員と同じ収入でも個人事業主は納税上限額が異なり、支払額を高く設定しやすいです。ふるさと納税の返礼品や節税効果を受ければ、お得感を得られやすいでしょう。

理由2.確定申告の手間が大きく変わらない

ふるさと納税で税額控除を受けるには、原則として確定申告が必要です。

給与所得者は確定申告が不要となるワンストップ特例を利用できますが、一定の要件から外れると確定申告をすることになります。

不慣れであれば手間になる確定申告も、個人事業主にとっては毎年の義務作業です。ふるさと納税額は寄付金控除として確定申告に金額を記入するだけなので、会社員より始めやすいといえます。

個人事業主の上限額は住民税の「2割」が目安

ふるさと納税で寄付した額から2,000円を引いた額が、所得税と住民税から控除されます。ただし、控除額には限度額があり、上限を超えた金額は控除対象外です。まずはご自身の控除限度額を知る必要があります。

個人事業主の場合、住民税所得割額の「2割」が目安です。毎年5~6月ごろにお住まいの自治体から送付される「住民税決定通知書」で、住民税所得割額を確認できます。この項目では、控除を受けるために押さえておくべき点を紹介します。

ふるさと納税の上限額を確認するのに必要な書類

ふるさと納税の上限額を知るためには、次の書類を用意します。

1.前年分の確定申告書(控え)

2.今年分の住民税決定通知書

正確な上限額を計算する方法

まず、前年分の確定申告書から課税所得額、今年分の住民税決定通知書から住民税所得割額を確認します。住民税所得割額は「課税所得額×10%」でも求められます。

そのうえで「住民税所得割額×課税所得額に応じた変数+2,000円」を計算すると、正確な控除上限額を導くことができます。課税所得額に応じた変数は、所得が増えるごとに段階的に増えます。

課税所得額

(所得税)

ふるさと納税 控除上限額

195万円以下

住民税所得割額×23.559%+2,000円

195万円超~330万円以下

住民税所得割額×25.066%+2,000円

330万円超~695万円以下

住民税所得割額×28.744%+2,000円

695万円超~900万円以下

住民税所得割額×30.068%+2,000円

900万円超~1,800万円以下

住民税所得割額×35.520%+2,000円

1,800万円超~4,000万円以下

住民税所得割額×40.683%+2,000円

4,000万円超

住民税所得割額×45.398%+2,000円

【所得税・住民税】個人事業主のふるさと納税の控除額

ふるさと納税で寄付した金額によって、所得税の還付金額と住民税の控除額が決まります。どれだけ節税できたか、手続きに不備がないかを確認するために、それぞれの金額を計算する方法を覚えておくと役立ちます。

それでは、所得税の還付額と住民税の控除額を計算する方法を紹介します。

所得税

所得税の還付金額の計算式は次のとおりです。

(ふるさと納税の寄付金額-2,000円)×所得税の税率

所得税は累進課税となっており、課税所得が増えるほど税率が上がる仕組みです。以下の表から課税所得ごとの税率を確認できます。

課税所得額

税率

1000円以上195万円未満

5%

195万円以上330万円未満

10%

330万円以上695万円未満

20%

695万円以上900万円未満

23%

900万円以上1,800万円未満

33%

1,800万円以上4,000万円未満

40%

4,000万円超

45%

また、寄付金控除の対象となるのは、総所得の40%までの金額です。

課税所得額500万円の個人事業主が、5万円のふるさと納税をした場合、税率は上記表より20%であるため、「(5万円-2,000円)×20%=9,600円」が所得税の還付金額となります。

参考:国税庁「所得税の税率」

住民税

住民税の控除額は基本控除と特例控除に分けて計算します。

基本控除額=(ふるさと納税の寄附金額-2,000円)×10%

住民税の基本控除額は、総所得の30%が上限です。

特例控除額は、特例分が住民税所得割額の20%を超えるか超えないかで計算方法が異なります。

1    特例分が20%以内の場合

特例控除額=(ふるさと納税の寄附額-2,000円)×(100%-10%-所得税の税率)

計算結果が住民税所得割額の20%以内であれば、この計算式で特例控除額が決まります。ただし、計算結果が住民税所得割の20%を超える場合には、②の計算式を用います。

2    特例分が20%を超える場合

特例控除額=住民税所得割額×20%

※特例控除額が住民税所得割額の20%超であれば、ふるさと納税の実質負担額が2,000円を超えるので注意しましょう。

先ほどと同様、課税所得額500万円の個人事業主が、5万円のふるさと納税した場合、基本控除額は「(5万円-2,000円)×10%=4,800円」。特例控除額は「(5万円-2,000円)×(100%-10%-20%)=3万3,600円」です。

3万3,600円が住民所得割額の20%以下だった場合、住民税の控除額は「4,800円+3万3,600円=3万8,400円」になります。

参考:総務省 ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」

個人事業主がふるさと納税で注意すべきポイント

ふるさと納税には、給与所得者とは違い、個人事業主だからこそ気を付けておきたいことがいくつかあります。ここでは、個人事業主がふるさと納税で注意すべきポイントを紹介します。

【ポイント1】「ワンストップ特例制度」が使えない

ふるさと納税には、確定申告をしなくてもふるさと納税による寄付金控除を受けられるワンストップ特例制度があります。

ワンストップ特例制度は、寄付した自治体から送られる申請書を返送するだけで手続きが完了します。便利な制度ですが、確定申告の不要な給与所得者を対象としているため、個人事業主は活用できません。

【ポイント2】所得が変動しやすいため上限額の把握が難しい

個人事業主の収入は年度によって大きく増減することが珍しくありません。そのため、控除上限額が毎年変動してしまう可能性が高いといえます。

ふるさと納税の上限額を超えて寄付をすると控除の対象とはなりません。個人事業主がふるさと納税で上手に節税するためには、総所得の目途が立つ年末になってから寄付するのが安心です。

まとめ

ふるさと納税は、実質自己負担2,000円で、自治体ならではの魅力的な返礼品を受け取ることができるほか、所得税の還付や住民税の控除を受けられます。確定申告を行うことが原則となりますが、毎年確定申告をしている個人事業主であれば気軽に始めやすいでしょう。

ただし、注意点があります。個人事業主は会社員のように「ワンストップ特例制度を利用できない」、「年収が変動しやすく控除上限額を把握しづらい」といったことを考慮しましょう。