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基本的に会社員のiDeCo(イデコ)加入は可能
老後資金の準備に対する意識が高まるなか、自分で金融商品を選んで積み立て、60歳以降に運用資産を受け取る確定拠出年金(DC)制度を利用する方が増えています。その流れから2017年、iDeCoのさらなる普及に向け、内容が変更されました。
変更前のiDeCo加入対象者は、国民年金保険の第1号被保険者(自営業者など)と一部の第2号被保険者(企業年金制度がない会社の従業員)のみでした。ですが、変更後は変更前の対象者に加え、そのほかの第2号被保険者(企業年金を導入している会社員や公務員)と第3号被保険者(専業主婦、主夫など)などの共済加入者も対象に加わりました。
つまり、20歳以上60歳未満であれば、ほとんどの方が加入できるということです。また2022年5月からは、「第2号被保険者(厚生年金加入者)」や「国民年金の任意加入被保険者」の加入年齢が「65歳になるまで」に変更されます。
例外的に会社員がiDeCoに加入できないケースもある
加入対象が増えたiDeCoですが、現在は残念ながらすべての会社員が加入できるわけではありません。
ここでは、会社員がiDeCoに加入できないケースについて説明しましょう。
勤め先が企業型DCとの併用を認めていない
会社が企業型DC(企業型確定拠出年金)を導入している場合、従業員にiDeCoとの併用を認めていないケースがあります。
企業型DCは会社が掛金を毎月拠出して、従業員が資産運用する制度です。基本的に企業型DCとiDeCoとの併用は可能ですが、「会社の規約でiDeCoの併用を認めている」ことが要件です。
ただし、2022年10月に要件が緩和され、会社の規約にかかわらず、個人の意思でiDeCoに加入できるようになります。「企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和」について、詳しくは記事後半にて解説します。
勤め先がマッチング拠出制度を採用している
企業型DCにはマッチング拠出と呼ばれる制度があります。
マッチング拠出制度は会社の拠出する掛金に従業員本人が掛金を上乗せするもので、従業員の掛金の全額が所得控除されるという大きな税制優遇があります。このマッチング拠出制度を取り入れている会社で働いている場合、iDeCoに加入できません。
ただし、2022年10月からは従業員がマッチング拠出して掛金を上乗せするか、iDeCoに加入するかを選択できるようになります。
会社員がiDeCoに加入するメリット・デメリット
前記の例外に該当しない会社員は今すぐiDeCoを始められます。しかし、実際に加入する前に会社員特有のメリットやデメリットについて理解しておくことが大切です。
それでは、会社員がiDeCoに加入するメリットとデメリットをお伝えします。
メリットは「節税効果」
iDeCoを始める最大のメリットは「節税効果」です。
一般に株式や投資信託などの金融商品を運用した際は、運用益の20.315%の税金が課されますが、iDeCoの運用益は非課税です。
また、iDeCoは積み立てた掛金の全額が所得控除の対象となります。毎月の給与から所得税や住民税を引かれている会社員であれば、節税効果を実感しやすいかもしれません。
ただし、iDeCoによる税制面の優遇を受けるには、「年末調整」や「確定申告」が必要となります。手続きがわからないとなると、所得控除の恩恵を受けられないので注意しましょう。
年末調整
iDeCoに掛金を支払っている会社員や公務員は、年末調整あるいは確定申告によって、1年間に支払った掛金を申告します。まずは年末調整の手続きを見ていきましょう。
主な年末調整の手続きは以下のとおりです。
【年末調整の手順】
1. 送付された「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管しておく
2. 「給与所得者の保険料控除申告書」に掛金の年間総額を含めた必要事項を記入する
3. 「小規模企業共済等掛金払込証明書」と「給与所得者の保険料控除申告書」を会社へ提出する
所得控除にはいくつか種類がありますが、iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」に当たります。毎年10~11月ごろに国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送付されるので、必ず保管しておきましょう。
次に、11月ごろに会社から渡される「給与所得者の保険料控除申告書(兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書)」に必要事項を記入します。その際、申告書右下の「小規模企業共済等掛金控除」の「個人型又は企業型年金加入者掛金」欄に、その年のiDeCoに払った掛金の総額を書きます。
あとは会社へ書類を提出すれば、年末調整の手続きは終了です。
確定申告
会社員や公務員といった給与所得者は、会社による年末調整によって所得の申告が完結するケースが多いため、通常であれば確定申告は不要です。
しかし、会社員や公務員も会社以外での収入が20万円を超える方や2ヶ所以上から給与を受け取っている方、2,000万円以上の給与を受け取っている方などは、確定申告を行わなければなりません。
さらに、10月以降にiDeCoの掛金を支払ったとき(「小規模企業共済等掛金払込証明書」の到着が年末調整に間に合わない可能性があるため)、そしてその掛金の支払いが1回目だった場合などに確定申告の手続きが必要になります。
iDeCoに加入した会社員や公務員が確定申告を行う手順は以下のとおりです。
【確定申告の手順】
1.送付された「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管しておく
2.「確定申告書A」に掛金の総額を含めた必要事項を記入する
3.「小規模企業共済等掛金払込証明書」と「確定申告書A」、源泉徴収票を税務署へ提出する
まずは年末調整と同じく、「小規模企業共済等掛金払込証明書」が手元に届いたら保管しておきます。
確定申告の書類は税務署あるいは国税庁のホームページから入手可能です。「確定申告書A」に、iDeCoへの掛金を含めた必要事項を記入します。
確定申告は原則、毎年2月16日に始まり3月15日が期限です。「小規模企業共済等掛金払込証明書」、会社から受け取った源泉徴収票を添付した「確定申告書A」を税務署へ提出すれば、確定申告は終了です。
自営業者との確定申告の違いは、以下のとおりです。
・一般的に、会社員は確定申告書が「A」、自営業者は「B」。
・会社員は源泉徴収票が必要、自営業者の場合は不要。
デメリットは「転職先によっては上限額が減る」
会社員であれば転職することも珍しくありませんが、iDeCoに積み立てた掛金は転職しても移動させることができます。iDeCoにはポータビリティ制度があり、以前はできなかった企業型DCも、ポータビリティ拡充で移換可能となりました。
しかし、iDeCoの扱いは会社によって異なるため、転職先でもiDeCoを運用し続けられるかは確認が必要です。
まずiDeCoは会社によって掛金の上限設定が異なります。転職先では掛金の上限が大幅に下がることもあるので、ライフプランの変更も考慮する必要があります。
また、iDeCo加入には会社が「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を用意する必要があるので注意しましょう。
これから会社員のiDeCo加入要件は緩和される
先述のとおり、2022年10月より、企業型DCに加入する会社員のiDeCo加入の要件が緩和され、会社の規約にかかわらず、マッチング拠出を採用している会社でも、iDeCoへの加入を選択できるようになります。
また、2022年5月からは第2号被保険者(厚生年金加入者)や国民年金の任意加入被保険者の加入年齢は原則60歳までから65歳までに拡大されることになりました。
この要件緩和にともない、企業型DCに加入する会社員がiDeCoに加入する流れが進んでいくものと予想されています。
まとめ
一部の例外を除いて、iDeCoは会社員も加入できます。さらに、2022年10月には制度改正も控え、会社員の間でiDeCo加入が進むことが考えられます。
iDeCoは節税効果が高く、老後資金の準備には最適な制度です。加入手続きや、会社によって異なる掛金の上限額など、必要な知識をあらかじめリサーチしておくと安心です。老後資金の準備に向けて、iDeCoを活用してみてはいかがでしょうか。